「え…これ、税金?こんなに引かれるの?」
売却後に届いた通知を見て、絶句する。
そんな現実、意外と多くのオーナーが経験しています。
「利益が出ると思ったのに、手元にはほとんど残らない」
「税理士に任せればいいと思ってたけど、任せきりで不安」
「そもそも、何をどう計算すればいいのかすらわからない…」
——そんな感情、決してあなただけではありません。
数字や税金の話って、聞いただけで構えてしまいますよね。
でも、知識がないまま“なんとなく”で動くのはリスクです。
とくに、アパート売却のような大きな資産移動では。
この記事では、アパート売却でかかる税金の基本から、
譲渡所得の出し方、計算のステップ、注意すべき落とし穴まで
一つひとつ、シンプルに、わかりやすく解説します。
知っているかどうかで、
手元に残る金額は、数十万、いや数百万円変わることも。
税金の“しくみ”を理解すれば、
見えなかった景色が、クリアに見えてくるはずです。
まずは「売却益」の正体から、紐解いていきましょう。
まず何にどれだけ税金がかかるかをざっくり把握
「アパートを売れば利益が出る」
でもそのあとに、大きな壁が立ちはだかります。
それが“税金”。
具体的にどんな税金がかかるのか?
まずは、全体像を見てみましょう。
アパート売却時にかかる主な税金はこの3つです:
- 譲渡所得税(国税)
- 住民税(地方税)
- 復興特別所得税(国税に付加される)
これらは「売却価格のすべて」ではなく、
**売却で得た利益(譲渡所得)**に対して課税されます。
つまり、売却しても利益が出なければ課税されないケースも。
だからこそ、「どれだけ利益が出るのか」を
正確に知ることが大切なんです。
税金を決める5つのステップをわかりやすく解説
税金は、感覚で決まるものではありません。
明確な「計算ルール」があります。
以下の5つのステップに沿って進めていきましょう。
まずは売却価格を把握します。
これは売買契約書に記載された金額です。
※入金額とは異なります。
登記費用や修繕精算などが差し引かれている場合があるため、
「契約上の金額」が基準になります。
取得費とは、物件を取得した際の費用です。
たとえば:
- 土地・建物の購入代金
- 仲介手数料
- 登記費用
- 司法書士報酬
- 建築費(建てた場合)など
ここで重要なのが、建物部分の減価償却。
年数が経てば建物の価値は下がる、と見なされ、
その分が取得費から差し引かれます。
例:3,000万円で購入した鉄骨アパート(10年保有)
→ 減価償却が1,000万円あれば、取得費は2,000万円
この減価償却を忘れると、
本来払わなくていい税金まで課されてしまいます。
次は、売却時にかかった経費=譲渡費用の確認です。
代表的なものは以下の通り:
- ●仲介手数料
- ●測量費用
- ●建物解体費(更地にして売る場合)
逆に、以下のような費用は経費になりません:
- ✖固定資産税
- ✖清掃費用
- ✖修繕費(売却のためでない場合)
譲渡所得 = 売却価格 − 取得費 − 譲渡費用
この金額がプラスになれば「課税対象」、
マイナスなら「譲渡損失」となります。
注意点:この譲渡所得は帳簿上の利益であり、
必ずしも実際のキャッシュとは一致しません。
最後に、譲渡所得に税率をかけて、税額を出します。
ポイントは所有期間による税率の違い。
所有期間 | 所得税 | 住民税 | 復興税 | 合計 |
---|---|---|---|---|
5年以下(短期) | 30% | 9% | 0.63% | 約39.63% |
5年超(長期) | 15% | 5% | 0.315% | 約20.315% |
例:譲渡所得が1,000万円で長期譲渡の場合、
税額は約203万円になります。
うっかり見落としがちな税金計算の落とし穴
アパート売却の税金計算で、
見落とされがちな“地雷ポイント”がいくつかあります。
● 取得費がわからないケース
古い物件や相続したアパートでは、
購入時の資料が残っていないこともあります。
その場合は「概算取得費(=売却価格の5%)」を使うことに。
例:3,000万円で売却 → 取得費は150万円とみなされる。
本来の取得費がもっと高かった場合、損をすることになります。
● 減価償却の漏れ
取得費から減価償却を引かないと、
「税務調査で否認される」リスクも。
正確な計算には、建物の構造や耐用年数を確認する必要があります。
赤字でも使える!節税につながる2つの制度
売却=必ずしも黒字ではありません。
でも、赤字だからこそ得するケースもあるのです。
● 損益通算
譲渡損失が出た場合、
他の土地や建物の譲渡所得の金額から控除できます。
個人が、土地や建物を譲渡して長期譲渡所得または短期譲渡所得の金額の計算上譲渡損失の金額が生じた場合には、その損失の金額を他の土地や建物。の譲渡所得の金額から控除できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。
なお、長期譲渡所得に該当する場合で居住用財産を譲渡したときに生じた譲渡損失の金額については、一定の要件を満たす場合に限り、譲渡をした年に事業所得や給与所得など他の所得との損益通算をすることができ、これらの通算を行ってもなお控除しきれない損失の金額については、その譲渡の年の翌年以後3年間にわたり繰り越して控除することができます。
国税庁:ttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3203.htm
● 繰越控除(最大3年間)
もしその年の所得と相殺しきれなければ、
翌年以降に繰り越して、最大3年間節税に使えます。
ただし、この制度を使うには確定申告が必須です。
「赤字だから申告しない」は、完全に損です。
自分で計算できるようになるための便利ツール集
正直、最初は計算が面倒に感じるかもしれません。
でも、頼りになるツールはたくさんあります。
おすすめリソースはこちら:
- ✅ 国税庁「譲渡所得の計算書(PDF)」
- ✅ 不動産ポータルの売却税金シミュレーター
- ✅ 無料エクセルテンプレート(検索で多数ヒット)
「ここだけはプロに確認したい」という場合は、
税理士へのスポット相談も有効です。
1時間の相談でも、数十万円のミスを防げることも。
まとめ:税金の不安から、自信ある一歩へ
「なんとなく不安だけど、誰に聞けばいいかわからない」
「計算ミスがあったらどうしよう」
「損はしたくない、でも動くのも怖い」
——そんな気持ちを抱えていても、大丈夫です。
それは、ごく自然で正しい反応です。
でも、今回ご紹介したステップを通して、
税金の全体像、計算の流れ、利益の出し方が見えてきたはず。
知ることで、見えなかった“リスク”が“選択肢”に変わります。
それは、あなた自身の資産を守る力にもなります。
たとえば、今日からできるのはこんなことです:
- 売買契約書を取り出して、売却価格を確認する
- 取得費に関する書類を整理してみる
- 計算ツールでざっくり試算してみる
小さな一歩でも構いません。
それが、未来の損失を防ぐ確かな“備え”になります。
税理士に任せるのも選択肢ですが、
自分で仕組みを理解することで、判断の軸が持てます。
知ることは、守ること。
そして、自分の未来を選び取る力です。
さあ、不安という霧を抜けて、
“納得できる売却”に向けて歩み出しましょう。
今日の一歩が、あなたの大切な資産を守る第一歩になります。